所沢の仕掛人。第4弾 角田テルノさん
所沢の仕掛人。
所沢の情報を発信する「所沢なび」では、「所沢の仕掛人。」をシリーズでお届けします。
このシリーズでは、「所沢を元気にする活動をしている人」にクローズアップしてご紹介していきます。
前回取材させていただいた渋谷正則さんからご紹介をいただいたのは、「所沢を楽しいマチにしたい」とイベントの企画・開催に取り組んでいる角田テルノさんです。
第4弾 角田テルノさん イベントの企画・運営
VOL.4 Mr. Teruno Kakuta (Event Planner)
取材 成田知栄子 2018年6月21日
もくじ
1.角田テルノさんってどんな人?
2.インタビュー
(1)テルさんのアイディアの原点
(2)暮らすトコロマーケット
(3)所澤神明 宵の市
3.次回の仕掛人。は?
1.角田テルノさんってどんな人?
昨年、所沢の所澤神明社の伝統行事「七夕祭」の日に、同じ境内で新たなイベント「 所澤神明 宵の市」が誕生し話題になりました。そのイベントを企画・催行し、所沢で新たなムーブメントを興している人が、角田テルノさんです。まちの人たちからは「テルさん」という愛称で慕われています。
テルさんは、生まれも育ちも所沢で、実家は北秋津。ストリートカルチャーがトレンドだった高校時代に〝カッコいいモノ〟に憧れて東京のデザイン専門学校で学びました。
2011年、旭町のビルの一室で、「Toys ADDiCT ( トイズアディクト)」という50年代~80年代に出回っていたアメリカのレトロなおもちゃばかりを取り扱ったお店をオープン。関東や関西などで開催されるイベントに出店を重ね、全国のマニアでも知られた人物です。テルさんの経験とセンスを生かし、2015年から「暮らすトコロマーケット」を開催し運営委員として参加しています。
2017年には新たなイベント「所澤神明 宵の市」をスタートさせ、アイディアとセンス、企画力、実行力などが評価され、まちづくりの有力なエッセンスの一人として注目されています。
2.インタビュー
(1)テルさんのアイディアの原点
◆「自分のいる場所を楽しくしたい」が原動力
成田:〝まちおこし〟を仕掛けるというのはかなりエネルギーが必要ですよね?
テルさん:一般的には、エネルギーが必要だと思うんですけれど、僕はとてもシンプルで、「自分のいる場所をとにかく楽しくしたい」という考えだけなんです。それが原動力となっているのだと思います。
成田:「所沢を楽しくしたい」と思うようになったのは、いつ頃からの思いですか?
テルさん:僕は生まれも育ちも所沢です。高校生の時はストリートカルチャーが流行っていた時代があって、その頃は、所沢ではなく、東京志向でしたよ。
成田:トレンドを追いかけてたんですね。高校時代はそういう考えの人がほとんどだと思います。
テルさん:遊ぶときは、原宿や下北沢。高校を卒業してデザインの専門学校に進学しても、やっぱり、自分の場所は「東京かな」と思っていました。そんな頃、所沢にも面白いお店がポツポツできてきて、そこで多くの人に出会っているうちに、「地元でもカッコいい生活ができるのではないだろうか?」と感じるようになったんです。お店の数は少ないですが、住んでいる人たちはカッコいい人が多かったですね。ポテンシャルが高いんですよ。所沢には音楽をやっている人も多いですし、芸術肌の人も多いですし、まだそのころの僕は10代でしたが、それを漠然と感じていて、地元でお店をはじめたいと思いました。
◆まちおこしの欲求のきっかけ「外貨の獲得」
成田:いい所沢の先輩に恵まれていたんですね。
テルさん:そうなんです。さらに追い打ちをかけたのが、僕がよく聴いていた地元を大事にしている北海道のバンドの音楽。歌詞カードを見ていると「東京に行ってやるなんて、もう古いんだよ~」とか「まずは地元でやらないとどうするんだ!」のような内容が書いてあって、ちょうど気持ちが地元に傾き始めた自分には十分な説得力がありました。そういうのが重なって、じゃー、まず地元を大切にしたうえで、東京に挑戦しようと思いました。でも、「しまった!東京ではじめればよかった!!」と思った時もあったんですよ。
成田:それはどういう時?
テルさん:お店に来るお客さんが、東京の人ばかりだった時。僕の「まちおこし」欲求のきっかけは、そのころ芽生えた「外貨の獲得(所沢住民以外からの消費)」です。僕がそのころやっていたのは、アメリカを中心とした50~80年代のレトロなおもちゃ屋さん。マニアックな商品なので、お客さんは、FacebookやInstagramなどから知って、1時間もかけて東京から来てくれる人がほとんど。さらには、アメリカやブラジルなど海外からも。それで、そのお客さんたちによく聞かれたのが、「所沢でほかに面白いところないの?」。飲食店はたくさんあるけれど、それ以外のものを提案できなくて。結局、僕の店に来ても、他にどこにも寄らず帰ってしまいます。そこで、外から所沢に来てくれた人に、どうやって楽しんでもらおうかなと考え始めました。自分のやっていることが、マニアックなジャンルの人には楽しんでもらえているということは確認できたので、さらにもっと幅広い人にエンジョイして帰ってもらえるのは何かをと考えました。
成田:いろいろ考え方も変化してきたのですね。
テルさん:はい。〝まろやか〟になってきましたね(笑)。最初は、承認欲求が半端なく、「俺をわかってくれる人だけでいいし・・・」みたいな考え方でした。今から思うと、結構〝痛い奴〟だったのですが、そういうのを通過すると、だんだん自分が認められることは、それほど重要ではなくなり、「何かみんなで面白い事できないかな」みたいな方向に意識が働いてきたんですね。
▲テルさんの店舗の様子
(2)「暮らすトコロマーケット」の開催について
◆大量消費のポップカルチャーを見直すイベント「暮らすトコロマーケット」
成田:「暮らすトコロマーケット」の副実行委員長さんなんですね?
テルさん:実行委員長は、東所沢の鉄骨家具をやっている岡田一さん。当時、僕がアメリカン・トイのおもちゃ屋をやっていた時に岡田さんから声をかけられて、運営メンバーになりました。僕も岡田さんも、ネット販売以外にも、関東圏だけでなく東海や関西などのイベントにいっぱい出店しています。出店すると、「全国のセンスはどうなっているのか?」をカッコいい、可愛いセレクトをしている他の出店者から肌で感じ、学び取り、「良いモノとはなんぞや」という感覚が鍛えられます。僕たちは、そういった現場をたくさん踏んできた自負があるので、経験してきて本当にいいと思ったものだけを出す、またそれをみんなに知らせたいということではじめたイベントなんです。
成田:テルさんと岡田さんがセレクトしたお店のみが集まったイベントだったんですね!
テルさん:コンセプトは、「生活を見つめなおす」。大量生産、大量消費に対して、「ちょっと割高になってしまうかもしれないけれど、手できちんとつくられたものを10年、20年使ってみるのはどうですか?」という提案です。食べ物でいうと、カップヌードル食べるよりも少し栄養を考えたラーメンを食べませんか?という提案みたいな。
成田:現代社会に投げかけるメッセージみたいで、カッコいいですね。
テルさん:これは岡田さんが考えたコンセプトなんですけれど、僕もこれに非常に賛同していますし、岡田さんをリスペクトしています。
成田:1回目の開催時は何店舗集められたのですか?
テルさん:一発目から100店舗。
成田:すごい!!それはお二人の人脈?
テルさん:ほとんど岡田さん(笑)。よく、「暮らトコ(暮らしところマーケット)」を他のイベントで開いてほしいと頼まれたりするのですが、そんなに簡単に開けるものじゃないので、断っちゃうんですよ。出店者の扱いも含めて大変なんです。こだわって、がんばっている出店者を引っ張ってくるというのは、そう容易くありません。本当にコンセプト固めてしっかり作りこんだものでないと、いい作家さんを説得できません。素敵な出店者ほど厳しい目線を持っているし、簡単には出店してくれません。また、こだわりが強い分、売れなかった時は、もう怖いですよ。「あのマーケットは駄目」などの噂があっという間に広がってしまいます。なので、実行委員としてはとても緊張します。モノづくりする時って、ある程度しっかりコンセプトをつくってやらないといけないものなんですよ。
成田:今年はいつ開催ですか?
テルさん:11月第2土・日に開催します。今年で4回目ですが、初めて2日間のイベントとなります。航空公園の青空の下で、ピクニック気分で来てもらって、いつも見たことのないようなこだわりの雑貨や食べ物が並んでいて、ワクワクしてもらえるような時間を過ごしてほしいです。
暮らすトコロマーケット
開催日時
2018年11月10日(土) ・11日(日)10:00~16:00
※小雨決行 荒天時中止
※当日、AM5:00に本ホームページ、Facebook,Insatagram,Twitterにて
開催可否を告知します。
開催会場
県営所沢航空記念公園内 所沢航空発祥記念館前 広場
埼玉県所沢市並木1-13
主催
暮らすトコロマーケット実行委員会
(3)所澤神明 宵の市の開催
◆「年を取って死ぬときにトントンでOK」
成田:宵の市は今年2回目ですね。こちらは、テルさんが実行委員長ですが、ほぼボランティアの活動ですね。お仕事の兼ね合いとか大丈夫ですか?
テルさん:想像以上に寝る時間を削って準備をしてます。「お金は、『稼ぎ方』が上手な人より『使い方』が上手な人を見る」って思っています。「こうやってお金を上手く稼ぎました」という人は、たいして面白くなくて、「こんなところに使っちゃいました」という人のほうが面白い。自分自身が、お金の使い方の面白い人になりたいし、そういう人は好きですね。はじめに話したように、僕は、楽しい空気の中にいるのが好き。その時に赤字になっても、後に、その時の接点から大きな仕事が入って来ることもあり、人との出会いは繋がっていって広がっていきます。もし、損得勘定をするのであれば、年とって死ぬときにトントンになっていれば、それでOKです。
◆「30、40代が地元を盛り上げる番だ!」
成田:宵の市はどんな思いで企画したのですか?
テルさん:「暮らトコ」とは真逆のことをやりたくなっただけ。
成田:え、どういうことですか?
テルさん:宵の市は、「誰でもおいで!」「出店したい人、みんな出ていいよ」みたいな。そもそも、お祭りってそういうものだと思います。「暮らトコ」は、こだわりのある僕らがセレクトした出店者だけですが、宵の市は、普通のお店さんだって、近所のママさんだって自由に参加OK。出店する場合は、申し込みとか必要ですけれどね。その日に神明社の「七夕祭」があって、賑やかな日だから、みんなが参加してみんなで盛り上がっていくのが、本来のお祭りの姿だと思っています。ナイトマーケットなので、その日は、子どもが夜更かししてもいい日になるといいですね。子どもたちが、夏の思い出の絵日記にしたり、そんなイベントになればいいなと思っています。
あともうひとつは、30歳以上の人が、「懐かしい」と思ってくれるような「宵の市」をめざしています。
成田:え?30代以上の人ですか?
テルさん:僕は、今34歳ですが、30代、40代の人たちが、地元を盛り上げる番だと思っているんですよ。そうしないと、今の子ども達がかわいそうですよ。僕たちの子どものころ、町の人たちとの中で、いい思い出をつくってもらいました。今は、駄菓子屋もなくなっちゃったし、個人店という魚屋さんや肉屋さんに、初めてのおつかいをする機会もなくなっちゃったし。
成田:そうですね。スーパーで無言のままでも買えますものね。
テルさん:それは、もうまずい!大いにまずい!僕たち30代以上の世代は、マチの思い出があるからいいけれど、今の子ども達は、マチの思い出が少ないでしょう?
所沢が都市化していっているのは、過疎化になっていくよりはよっぽどいいことなんですけれど、まちづくりを担って盛り上げていくのは、30,40代の僕たちの世代だとおもっているんです。だから、地域の子ども達に思い出を残してあげられることを一緒にやりましょうって声を上げたい。そんな願いもあって、はじめた企画でもあるんです。
成田:「暮らトコ」は所沢市外のお客さんを意識されていますが、「宵の市」は、所沢の地元ターゲットですね。
テルさん:そうです。「宵の市」のほうは地元密着、町の人全員対象。僕の思い出の「お祭り」は、商店街や町内会でやっていたお祭り。ビニールシートが敷いてあって、みんなで飲食しているのが印象深かったのですが、最近はその光景を見なくなったし、そもそも小さいお祭りは消えてしまいましたよね。「宵の市」では、そんな僕が体験した風景のような、みんなが気楽に使える「大広間」を作っています。昨年は、畳を敷いて、現代作家のデコレーションをして空間演出しました。今年も大広間フリースペース、デコレーションをします。
成田:今年の新しい企画はありますか?
テルさん:今年はビクセンさんが後援についてくださり、午後7時半頃から三鷹の国立天文台の方が七夕にちなんだ星々の話をしてくれます。天体望遠鏡も2〜3台持ってきていただけるようです。解説をみんなで聞きながら夏の夜空を眺めることができると思います。
開催概要
開催日時
第2回 所澤神明宵の市
【日時】
平成30年8月7日(火) 15時~21時
※小雨決行(荒天時は所澤神明社七夕祭と同じ)
【場所】
所澤神明社 境内/中段・下段
埼玉県所沢市宮本町一丁目二番四号
3.次回の仕掛人。は?
成田:さて、テルさんご推薦の「所沢の仕掛人。」をご紹介ください。
テルさん:では、地域貢献事業をやっている合同会社RPG、社長の戸巻由高さんをご紹介します。
成田: ありがとうございます。