「テニピン」を通じて子ども達にスポーツの楽しさを伝えたい イトマンテニススクールコーチの挑戦とは
「テニピン」とはテニスのおもしろさを誰もが味わえるようにと考案された簡易のネット型球技。手の平にはめたスポンジのラケットで、スポンジのボールを打ち合うスポーツです。
このテニピンを学校の体育の授業に取り入れて子どもたちにテニスの楽しさを伝えたい、と働きかけているのが、イトマンテニススクール新所沢のコーチ田島直人さん。
この取り組みを始めたきっかけやテニス指導者としての思いをうかがいました。
テニスコーチ歴25年、普段はコーチとしてスクール生にテニスを教える田島さん。
テニスは自己決断、自己責任のスポーツであることから、多くの子どもたちにテニスに触れて自立心を育んでほしいと以前から考えていました。
ただ、小学校の体育では、用具の扱いの難しさ、場所の確保などの課題があり、テニスなどラケットを使った球技の学習は授業に取り入れることが難しいと言われています。
手軽にテニスを楽しめる「テニピン」に田島さんが関心を持ち始めた頃、あるテニススクールの生徒が縁で「テニピン」考案者の今井 茂樹先生(山梨学院短期大学/日本テニス協会)とつながることができ、この活動を始めるきっかけができたそうです。
今井先生の働きかけで、所沢で初めてのテニピン授業が2020年秋、所沢市立並木小学校で実現しました。まずは先生への事前説明、そしてテニピンを実際に体験してもらい、感覚をつかんでからの子どもたちへの授業。3年生40名弱の児童が、初めてのスポーツに夢中になり、最終日には、団体戦のゲームを楽しみました。
「思ったより順応性が高く、考えていたよりも早くテニピンになじんでくれました。普段、テニススクールでは、1クラス最大8人という少人数でレッスンをするのですが、一度に40人近くの児童に教えたこと、成長の過程を目の当たりにできたことがよい経験になりました」と田島さんは話します。
誰でもテニスを楽しめるようにという願いから生まれた「テニピン」。どんな特徴があるのでしょう。
まず道具(ラケットとボール)がこちら。
柔らかい素材でできたラケット。実はこれ、「ダイソー」で販売している園芸用の膝当てを利用してラケットにしたという手軽なもの。ちなみに段ボールなどの身近な素材でも作ることができます。
手のひらを入れてみると、なんともしっくり。ぶんぶん振り回しても外れることなく手にフィットしています。このラケットで、スポンジボール(子ども用の柔らかいテニスボール)を簡易のネットを挟んで打ち合います。
卓球のようにダブルスで交互にボールを打つので、平等に活躍のチャンスがあるのがポイント。テニピン授業では、練習の仕方を考えたり、ルールを作ったり、戦略を立てたりするのはすべて子ども達なので、主体的にゲームに向き合うのだそうです。
子ども達にテニピンで身についた「力」を書いてもらうと「判断力」や「あきらめない力」などをおさえて断トツで多かったのが「協力」でした。
「うまくいった子に『コツを教えてくれるかな』と頼むと喜んで発表する。友だちに教えることで、自分がまたうまくなっていく。そんな”楽しむ意欲”が見られた」と田島さん。
学校の先生からは「運動が苦手な児童でも容易にできた」「体を動かすだけでなく、考えている様子も見られた」など、対話的な学びが実践できたとの前向きな感想をいただいたそうです。
所沢市でテニピンの授業をサポートした学校はほかに、伸栄小学校、山口小学校、北中小学校。
こちらは今年2月に実施した北中小学校6年生からの手紙集。
「はじめはうまくいかなかったけど、2回目から楽しくできた」「テニスをやってみたくなった」「来てくれてありがとう」など感想やお礼が綴られていました。
そんな「テニピン」に情熱を傾けている田島さんに、イトマンテニススクールの他のコーチも一目置いていて、時には授業に同行して活動を支えています。子どもたちの前でコーチ同士の本気のテニスを見せたら「おーっ!」と歓声があがったとか。
左:木村 貴大コーチ、右:田島直人コーチ
テニススクールのコーチが学校に営業をかけてきたのは田島さんが初めてとのこと。いまも自ら小学校に出向き、テニピン授業の提案をしています。
今後も多くの小学校の体育授業でテニピンを導入してもらい、テニスやテニピンをとおして子ども達の『学び』に携わっていきたいと、想いを語ってくれました。
この授業が地域への貢献となり、さらにテニス全体の普及につながることを期待しています。
地域貢献という文脈で最後にもう一つ。
このテニススクールでは、毎月半分のボールを新品に入れ替えるのですが、毎月1000個以上にのぼる使用済みボールはどうすると思いますか。
実は欲しいという小中学校に寄付しています。
テニスボールは、机や椅子の脚に取り付けて再利用します。これによって、机や椅子を動かしたときの騒音緩和と床の傷を防ぐことに役立つのだそうです。
廃棄するにもコストがかかるテニスボール。このように役割を変えて活用されているなんて知りませんでした。
いかがでしたか。
今回はテニピン授業を学校に導入しようと、熱い思いで活動しているイトマンテニススクール新所沢のコーチ田島さんを紹介しました。
テニスを通して子どもたちの自立心を育みたい、スポーツの楽しさを伝えたい、その思いが縁を呼び、地域とつながり、よい循環が生まれています。このような取り組みが多くの人に届き、スポーツの選択肢を広げるきっかけになるといいなと思います。
イトマンテニススクール 新所沢
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