所沢の仕掛人。第3弾 渋谷正則さん
所沢の仕掛人。
所沢の情報を発信する「所沢なび」では、「所沢の仕掛人。」をシリーズでお届けします。
このシリーズでは、所沢を元気にする「所沢の仕掛人」にクローズアップしてご紹介していきます。
前回の大石健一さんからご紹介をいただいたのは、まちづくりに尽力を注いているOECマルシェ株式会社 代表取締役の渋谷正則さん。渋谷さんの今年の活動についてうかがいます。
第3弾 OECマルシェ株式会社 代表取締役 渋谷正則さん
VOL.3 Mr. Masanori Shibuya (CEO「OEC Marche」)
取材 成田知栄子 2018年5月31日
もくじ
1.渋谷正則さんってどんな人?
2.インタビュー
(1)航空公園の中で所沢牛BBQを味わう!
(2)新ブランド「所沢牛」ができたワケ。
(3)地域のコミュニティと商店の活性化「ローカルフードマルシェ」
(4)ローカルファースト事業団のまちづくり
3.次回の仕掛人。は?
1.渋谷正則さんってどんな人?
所沢の食産業に関わっているなら、渋谷正則さんを知らない人はいないでしょう。
人物そのものを知らなくても、所沢航空発祥記念館内にある「エコトコファーマーズカフェ」や所沢市民文化センターミューズにある「ミューズレストラン響(HIBIKI)」と「ミューズカフェ彩(IRODORI)」を所沢市民なら、きっとご存知ではないでしょうか。
そうなんです!!あの、地産地消をテーマにしたカフェやレストランは、渋谷さんが代表取締役を務める「OECマルシェ(株)」の飲食店なのです。
渋谷さんは、県立所沢高校出身で、大学は、電子工学部に進学。在学中に「食の世界」に魅了され、調理専門学校に入学。都内のフランス料理店で修業を積みながら、3度研修のためフランスに渡った経験もあります。その後、都内大使館や外資系企業のイベントパーティなどの運営などの経験を積み、2003年「レストラン事業で培った経験と知識を地元・所沢で役立てたい」という思いで、地元、所沢に戻ってきました。
所沢では地産地消をベースとしたフランス料理店「ビストロプピーユ」を2003年にオープン。
その後の渋谷さんは、持ち前の輝く「センス」「知識」「人脈」「決断力」を生かして、所沢の町の活性化に貢献を続け、発展・進化させています。
※2017年にも渋谷正則さんをインタビューしています。2017年渋谷正則さん記事
<所沢での主なヒストリー>
2003年 フランス料理店「ビストロプピーユ」開業(個人業)
2008年 支店「わいん酒場メルロ」開店
2010年 「エコトコファーマーズマーケット」運営
2011年 「ゼーホフ工房2階レストラン」店舗設計、運営
2012年 OECマルシェ株式会社 設立
「ラジャ」業務委託、メニュー開発
2013年 「エコトコファーマーズカフェ」開店
2014年 「とこロッケバーガー」メニュー開発
2015年 「ミューズレストラン響」「ミューズカフェ彩」開店
2016年 「とこベジドッグnicorico」業務委託、店舗設計等
「とことん肉汁ラーメン」メニュー開発(石坂産業)
2017年 「ベジパーク」営業権譲受、開店
所沢牛専門店「べこ助」開店
2018年 「ニコリコハウス」開店
★2010~2013年
「エコトコファーマーズマーケット」実行委員会(スカイライズタワー商店会)
★2015~2018年
「ソラバル」実行委員長(所沢市)
★2018年 所沢ローカルファースト事業団 代表
2.インタビュー
渋谷さんのインタビューは、航空公園に4月22日にオープンしたばかりの「ニコリコハウス」で行いました。
(1)航空公園の中で所沢牛BBQを味わう!
成田:航空公園の南側に新店「ニコリコハウス」が誕生しましたね。公園北側の航空発祥記念館内の「エコトコファーマーズカフェ」との違いは?
渋谷:はい。4月22日にオープンしました。バーベキュー場があるので、「所沢牛」のBBQが食べられます。バーベキューテーブルは8台あり、BBQの方は、6月1日からオープンです。1週間前までにホームページでご予約いただければ、ご利用いただけます。
(2)新ブランド「所沢牛」ができたワケ。
成田:「所沢牛」という名前は今年に入ってから、よく聞くようになりました。
渋谷:「所沢牛」というブランド名は、今年からで、昨年までは「見澤牛」と呼んでいました。東所沢の亀ヶ谷にある畜産農家「見澤牧場」で育てられた牛だから「見澤牛」。見澤牧場の歴史は古くて1940年代に見澤さんの祖父が酪農をはじめ、肉牛の出荷を始めたのは、1970年頃からだそうです。おいしい肉に育て上げる技術を受け継いで、今では、200~300頭の牛を飼育。毎月8頭出荷しています。
成田:そんな古くから所沢にも畜産農家さんがあったのですね。でも、なぜ、今年から広まってきたのでしょうか?
渋谷:私は地元の食材を使うことをコンセプトにした飲食店を展開しています。私が2014年に「エコトコファーマーズカフェ」をオープンさせた時に、大石健一さん(前回の「所沢の仕掛人。」)から見澤さんをご紹介いただき、実は、4年前から「見澤牛」を私のカフェやレストランで使用していました。そして、昨年の秋ごろ、焼き肉店の新店のお話をいただき、「見澤牛」を一頭買いして和ケ原に「焼肉べこ助」を開店させることになり、そのタイミングで「所沢牛」とブランド名に変わりました。全国の有名なブランド牛は、ほとんどの場合、地名がついているので、見澤牛も、地名の「所沢牛」としたわけです。
成田:料理職人からみて、「所沢牛」は、食材としてはどうですか?
渋谷:それが、良すぎるほどの肉なのです。4年前から使っていたと言いましたが、焼き肉やすき焼きなどのシンプルな肉料理ではなく、ハンバーグやソーセージなど加工して使っていましたので、もったいないくらい良すぎるんです。絶妙なサシ加減と味の濃い赤味肉は「A5ランク」などの高い格付け評価を受けています。
成田:それで、シンプルに肉の素材が味わえる「焼き肉べこ助」や、こちらの「ニコリコハウス」でBBQを開こうと思われたのですね。
渋谷:そうなんです。これまでは、なかなか地元産の肉の良さを広くPRできず、ただ「美味しい」だけで終わっていたような気がするのですが、焼き肉やBBQだと、シンプルに所沢牛の味を楽しんでもらえます。「一頭買い」なので、希少部位から極上の赤身や霜降りまで、丸ごとおいしく「地産地消」を味わっていただけます。
成田:なぜおいしく育っているのでしょうか?
渋谷:「交雑種」と呼ばれる乳牛と和牛の掛け合わせで、かけ合わせる和牛に黒毛和牛を使っていることで、サシが程よい牛が産まれるそうで、「黒毛にもまけない味」と評判です。見澤さんの長年の経験による「牛を育てる環境づくり」だそうです。見澤牧場は、一般的な牛舎よりも1頭あたりのスペースを広くとって、ストレスを少なくし、伸び伸びと育てています。えさは、牛がよく食べるトウモロコシなどの配合飼料と牧草や稲わらを与え、牛の成長に合わせて、与える栄養分の調整もしながら飼育しているそうです。
「所沢牛」のおいしさを体験できるお店(2018年6月現在)
◆所沢食肉市場「焼肉べこ助」
所沢牛一頭買い特約1号店
希少部位入り「名物5種盛り」、限定メニュー「1ポンドメガ盛り壺カルビ」など
【住所】所沢市和ケ原1-41-11(西武池袋線 狭山ケ丘駅西口徒歩5分)
【電話】04-2947-8629
◆ニコリコハウス
BBQで所沢牛を食べられる(要予約)
所沢航空記念公園内バーベキューエリア
所沢市並木1-13
予約はWEBで⇒所沢航空公園でBBQ
◆ゼーホフ工房レストラン
コースのメインにフィレやサーロインステーキ(単品注文も可。要予約)
【住所】所沢市けやき台1-8-5(西武新宿線 新所沢駅西口徒歩10分)
【電話】04-2921-5511(水曜定休)
◆ミューズレストラン響
所沢牛のソーセージ、ハム、ジャーキーの3種盛りなど
【住所】所沢市並木1-9-1ミューズ内(西武新宿線 航空公園駅東口から徒歩9分)
【電話】04-2968-6972
(3)地域のコミュニティと商店の活性化~「ローカルフードマルシェ」~
成田:前回の大石健一さんも話しておられた公園の利活用の第1回として「ローカルフードマルシェ」が北野公園(小手指駅南口徒歩5分)で開催されましたが、手ごたえはいかがでしたか?
渋谷:これは上手く行きました。第1回は、もともと毎年1000人規模のウォーキングイベントが北野公園を出発点にしていることで企画されたものです。地元の商店をPRすることが目的なのですが、それをサポートしてまちを盛り上げる役目として「所沢ローカルファースト事業団」を作り、その中の「地域連携マルシェプロジェクト」でサポートしました。地域の商店の店主も高齢化しているので、商店のスタッフがイベントに出られない時は、「ローカルファースト事業団」のスタッフが物販し、PRする取り組みです。
成田:画期的な取り組みですね。出店も飲食からワークショップまでバラエティに富んでいましたね。
渋谷:そうなんです。飲食のほか、ママさんたちがやっているハンドメイドやワークショップも一緒になってやりました。北野公園は、ウォーキングイベントの集合場所だったので、はじめは「コーヒーがあればいいんじゃない」という話でしたが、どんどん膨らんでいって、どうせやるなら地域の人も巻き込んで「お昼ごはんも用意しよう」ということに。そもそもこの企画の目的は、「地域住民との交流」と「地元の食や商店のPR」でしたので、私は「所沢牛」を使った食べ物をPRしました。地域のママさんたちの口コミはすごいパワーがあって、結果は予想以上になりました。
公式発表だと、ウォーキングイベントは1600人だったのですが、マルシェ自体の来場者数は700人。販売した食数は、ざっとですが、1000食以上出ているので、イベントとしては大成功でした。
成田:どのように地域のみなさんに広報したのですか?
渋谷:事前に町内会で近隣まわりしたり、町内会の掲示版にチラシを掲示してもらったり、回覧板でまわしてもらったり、北中小学校は、学校の生徒さんに配布してもらったり…。「ローカルフードマルフェ」開催にあたり、いろいろな方が地域で協力して宣伝してくれました。町内会、商店会、小学校。地域の人たちの協力はすごく大きいと感じました。
成田:地域の人の反応はいかがでしたか?
渋谷:「次回も楽しみにしています」という声をたくさんいただきました。イベントは、ママさん中心に親子が来てくれたのですが、そこに普段から公園を利用しているシニア世代も来ていて、イベントを通じて、世代を超えての交流ができていたと思います。普段は近所で会ってもあいさつだけという間柄でも、公園が舞台になるとなると互いに会話し、交流するようになるんです。それは、「公園」という場所がなせる業だと思いました。公園は、一般的なイベント会場と比較して、垣根が低く、どの世代でも入り込みやすい性質があります。地域のコミュニティ力を高めるにはいい場所です。
成田:今年は、ローカルフードマルシェは、どのように展開していきますか?
渋谷:今年は少なくともあと3回、公園を使った「ローカルフードマルシェ」を開催したいと思っています。2回目は、ソラバルの時に同時開催で2か所の公園で予定しています。詳細は決まり次第、またお知らせします。
(4)ローカルファースト事業団のまちづくり
成田:「ローカルファースト事業団」は、どのようなことを目的としているのですか?
渋谷:ローカルファースト事業団は、活性化していない地域にどうやって新しい形の商店街をつくるかというモデルケースを作っていく事業で、今年は商店街プロジェクトが動き始めます。今、早速やろうとおもっているのが、「うらトコ通りnext商店会プロジェクト」です。
成田:「うらトコ通り」ってどこにありますか?
渋谷:まだ名前がついていない通りで、これから付けるんです。場所は、プロペ通りの「島田印房」さんとファミリーマートの間の横道。この通りは、夜になると暗く賑わいに乏しい通りになってしまいます。今後、所沢駅周辺の開発が進む中、新たな地域の魅力の発信とブランディングを行い、地域の皆さまにも誇りを持ってもらえるような新たな時代の商店会をつくり「賑わい」を創出するプロジェクトです。
まずは、「島田印房」さんから入る脇道から旭町の踏切付近までを「うらトコ通り」と命名し所沢駅東口のグランエミオからの回遊性をもたせ、新規利用客常連客を増やし賑わいを作るプロジェクトを始めたいと考えています。そのオープニングは、所沢の夏まつりとして定着してきた街イベント「野老澤行灯廊火」の日の7月21日。「うらトコ通り」の行灯を作って、行灯を置きます。
▲所沢駅西口から歩くとプロペ通りの終わり地点
うらトコ通りの風景
成田:いいアイディアですね。具体的にはどのように「うらトコ通り」を盛り上げていくのですか?
渋谷:にぎわいを創出するために、年内に考えている3つのことがあります。
その1 加盟店店舗前に行灯を設置し視覚的に明かりを灯します。
(7月中旬より野老澤行灯廊火イベントと同時開催)
その2 地域と連携して定期的にマルシェを開催します(月に数回開催予定)
その3 うらトコ祭りを企画運営します。(秋頃予定)
成田:面白そうですね。
渋谷:特徴としては、これまでの商店会の概念を進化させています。これまでは、その通りの商店の人が会員になるものでしたが、「うらトコ通り商店会」は、「うらトコ通り」を応援する人なら誰でも会員になれるといういわゆる「クラウド会員」制度を用いて、商店会の運営費を募ります。しかも、1か月500円。会員になって「うらトコ通り」に行くと、500円相当の特典がもらえるという仕組みです。
成田:実質、会費分のサービスが受けられるということなんですね。
渋谷:はい。会員の方に、「うらトコ通り」に出かけてもらって一緒にもりあげてもらおうという仕組みです。この地域にいなくても誰でもワンコインでスポンサーになれ、リターンがあるという方法です。ピザ屋さんに行ったら500円引きになるとか、ビール屋さんに行ったらビールが1杯サービスになるとか。
成田:商店街を生かすことは、決して他人事ではなく、一緒に作っていけるシステムですね。
渋谷:そうなんですよ。まちづくりって商店会の人だけではできるものではなく、これからは、地域全体で、にぎわいをつくり、応援していく時代です。所沢は家賃が高くて、若い人が入ってきにくい環境なので、若い人たちも入って来やすいシステムづくりが必要です。それが、今回やろうと考えているネクスト事業の本質だと思っています。
理想的には、店主が平均年齢が40歳未満の商店会。そして、商店会長が20代後半くらいの若い人が自主的に考えて運営できる商店会です。
成田:うらトコ通りの今後に期待したいですね。
成田:さて、渋谷さんご推薦の「所沢の仕掛人。」をご紹介ください。
渋谷:では、「暮らすトコロマーケット」や「所澤 神明宵の市」を企画・運営している角田テルノさんをご紹介します。
成田: ありがとうございます。
「所沢の仕掛人。VOL.4」 は 角田テルノさんです。お楽しみに!