”甘党”の鳥「メジロ」、春には梅の花の蜜を吸っています
梅の花にメジロが吸蜜に来ています
狭山丘陵自然史研究会で雑木林や湿地、川の生物の調査研究のほか、大学で自然環境の保全や自然保護文化論を手掛ける永石文明です。
自然への旅という趣味が高じてネイチャーガイドもしています。
この季節、所沢市内では、2月下旬から3月中旬にかけては、梅の花がよく見られます。
梅の花を見かけたら、その蜜を吸う「メジロ」という鳥に注目してみましょう。
▲梅の木にやってきたメジロ
メジロは甘いものに目がない?!
メジロは、冬にはサザンカの花、春になるとヤブツバキやウメの花に訪れます。
メジロは甘いものには目がなくて、庭先にお皿の上にミカンやカキの実、ジュースなど入れておくと飛来することがあります。
食べ物など何も置かなくても、庭先に1本だけ梅の木がある住宅地でもメジロがやってくるかもしれません。
メジロの個体数は全国的に多いので、梅以外にもこれから咲くサクラの花でも、メジロを近くで見る機会が多くなります。
メジロは梅の「花粉の運び屋さん」
メジロと梅の関係を見てみましょう。メジロは梅の花の蜜を食べにくるだけなのですが、梅にとってみれば、メジロは花粉を別の花に運んでくれる大切な動物といえます。
メジロは梅にとって結実のための花粉の運び屋さんになります。マニアックな呼び方をすれば、メジロは梅の花の「ポリネーター(送受粉者)」ともいいます。
▲梅の花の蜜を吸うメジロ
メジロは「長兵衛・忠兵衛」と言っている?
メジロを見ていると、枝につく花の蜜を求めて、枝から枝へ活発に飛び移る様子がわかります。
ときおり、ツィーツィーと鳴くのが聞かれます。この声は「地鳴き(コール)」といい、個体同士で連絡しあうためのコミュニケーションの鳴き声です。
繁殖期などに鳥が歌うように鳴く声を「さえずり(ソング)」といいます。そこで、鳥がさえずる声をわかりやすく人の言葉にし、覚えやすくしたのが「聞きなし」です。
メジロのさえずりは、「チョウベェチュウベェチョウチュウベェ(長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛)」という聞きなしが作られています。
メジロのさえずりは実際には長く鳴き続ける声ですが、はたして聞きなしのように聞き取れるか、確かめてみましょう。
また、聞きなしは、自分流に好きなように作るのも楽しいと思います。
メジロの目は白い?
メジロの体の特徴を見てみましょう。
メジロの大きさは、嘴の先から尾の先までの長さ(全長)が約12センチ、体重が9~12グラムあります。スズメより小さな体をしています。
メジロの体の羽毛は全体的にオリーブ色を帯びた緑色をしており、眼の周りの白いのが特徴です。メジロだから眼が白いのではなく、瞳は黒色で、虹彩は淡い褐色です。眼の周りが白色の囲眼羽(いがんう)と呼ばれる羽毛になっていて、眼をぐるっと取り囲んでいます。
▲枝から枝へと飛び移るメジロ
メジロの分類ですが、メジロ科メジロ属の鳥です。
動物がすんでいる地域を生息分布域といいますが、メジロは、日本では北海道南部から沖縄諸島まで分布しています。メジロは分布する地域によって小分類的に分けられています。この小分類名を亜種名といいます。
亜種の特徴はすんでいる地域からの移動がなく、亜種同士の交雑がほとんどないため、地域によって大きさや色が少しずつ異なります。伊豆諸島にすむのはシチトウメジロ、小笠原群島にすむのはイオウトウメジロ、大東諸島にすむのはダイトウメジロ、屋久島・種子島にすむのはシマメジロ、奄美諸島や琉球諸島にすむのはリュウキュウメジロと呼ばれます。
本州にすむ亜種メジロに比べて、国内の他の亜種は嘴や脚が長かったり、背中の緑色や喉の黄色みが濃いなどの違いがあります。
アジア圏のメジロもハワイでは外来種……
生物の名前は言語が異なるため、国ごとに呼び名が違います。そこで、世界共通の科学的な名称として学名がつけられていますが、メジロの学名はZosterpus japonicus(ゾステルプス・ヤポニクス)です。
日本のという意味のヤポニクスがついていますが、メジロの分布は、日本だけでなく、中国や朝鮮半島、台湾、東南アジアに広くすんでいます。日本以外の世界までを入れると15の亜種が知られています。
メジロは本来、米国のハワイ州にすんでいなかったのですが、1929年に飼い鳥として導入された歴史があり、その後生息数が増え、現在ではハワイ州のすべての島で見られるようになりました。
なかでもハワイ島では、メジロは都会から山奥まで広範囲に生息するため、餌環境を同じくするハワイミツスイ類と競合し、ハワイミツスイ類の種数や個体数を減らす原因をつくる外来種となっています。