所沢の仕掛人。第6弾 【前編】田畑大介さん 榊原美和さん
所沢の仕掛人。第6弾
【前編】田畑大介さん 榊原美和さん
所沢の仕掛人。
所沢の情報を発信する「所沢なび」では、「所沢の仕掛人。」をシリーズでお届けします。
このシリーズでは、「所沢を元気にする活動をしている人」にクローズアップしてご紹介していきます。
今回は、所沢市街地の活性化を四季折々のイベントで仕掛をしている「とことこまちづくり実行委員会」の田畑大介さんと榊原美和さんに取材させていただきました。
「とことこまちづくり実行委員会」は、埼玉県が実施している平成29年度「元気な商店街応援事業」の商店街部門で受賞しています。
お二人が率いている「とことこまちづくり実行委員会」は、年間を通じた活動になっているため、前編、後編の2回のシリーズに分けてお届けします。
VOL.6 Mr. Daisuke Tabata & Ms. Miwa Sakakibara (Executive Committee of TOKOTOKO Town Development)
取材:2018年9月5日 成田知栄子
所沢の仕掛人。第6弾【前編】
1.とことこまちづくり実行委員会とは?
「とことこまちづくり実行委員会」とは2011年に所沢中心市街地にある商店組合「所沢日栄会協同組合」「所沢プロぺ通り商店街振興組合」「所沢ファルマン通り商店街」「所沢銀座協同組合」が連携してまちづくりイベントを行う委員会。事務局は、愛称「まちぞう」で親しまれている「野老澤町造商店(ところさわまちづくりしょうてん)」です。
「まちぞう」は、所沢の歴史や文化の良さを伝え、所沢市の中心市街地一帯を活性化させ、よりよい住みやすい町づくりをめざす活動を行っている施設です。
「とことこまちづくり実行委員会」は、「まちぞう」スタッフと町の各商店組合とがタッグを組んで、所沢市のサポートを得て、初春は、「野老澤雛物語・新三八市『時代着物市』」、春は「とことこタワーまつり」、夏は「野老澤行灯廊火」、冬は「サンタを探せ」など四季折々のまちイベントの企画・運営・実施を行っています。
「所沢日栄会協同組合」の田畑大介さんを実行委員長に、まちぞう店長の榊原美和さん、スタッフの杉本光江さんが、中心メンバーとして活動を行っています。
▲「とことこ実行委員会」事務局スタッフ 左から 田畑実行委員長 榊原さん 杉本さん
2.祝!平成29年度「元気な商店街応援事業」商店街部門受賞
所沢市で初の受賞!
▲授賞式 埼玉県庁で。 左から 田畑実行委員長 上田清司埼玉県知事 実行委員でまちぞう店長の榊原さん
昨年、埼玉県が行っている「元気な商店街応援事業」の商店街部門に、所沢市の「とことこまつづくり実行委員会」が受賞しました。所沢市が受賞したのは、これが初めて。また、これまで市民で組織する「実行委員会」が受賞したのも初めてということです。
埼玉県は地域商業の魅力を発信するため、商店街の活性化に寄与した取組や魅力と個性あふれる店づくりを行い商店街の集客に寄与した個店を表彰する『元気な商店街応援事業』を実施しています。表彰は、商店街を活動の場にした優れた活性化の取組を表彰する「商店街部門」と魅力と個性あふれる店づくりで商店街活性化に寄与した個店を表彰する「個店部門」があり、同実行委員会が受賞したのは「商店街部門」。
同実行委員会が毎年7月第3土曜日に開催している「野老澤行灯廊火」が表彰されました。
<埼玉県ホームページより>
<受賞理由>
●中心市街地一帯の回遊性を高めることで、商店街や個店の認知度向上につなげた。
●伝統的な行灯を、 地域住民に昔から親しまれている神社に設置することで、地元への愛着を育む機会を創出した。
●学生・ボランティアとの協力により、商業者と地域の結びつきを深めるイベントとして確立した。
3.インタビュー
(1)発足の秘話 ~被災地を想い誕生~
成田:「とことこまちづくり実行委員会」は、どのようなきっかけから設立されたのですか?
田畑:毎年5月に開催していた「タワーまつり」を日栄会の方で開催していたんだけど、東日本大震災があった2011年に、商店会から「こんな時だから、まつりは中止すべきだ」という意見が出たんです。でも、こんな時だからこそ、やる意義があるのではないかと思っていたところ、私の意見を応援してくれたのが、まちぞうの店長の榊原さんだったんだよね。
榊原:そう。こんな時だからこそ、逆転の発想でやりましょうよと。お客様に来てもらって、まつりで義援金を集めて贈ったらどうかと提案しました。
田畑:それで、震災が起こる前から準備していた「タワーまつり」を中止することなく催行した結果、義援金が50万円以上も集まったんです。町のみなさんも同じ思いだったのか、中止しなくてよかったと思ったよね。それでね、この成功の陰には銀座通りの「井筒屋」(現まちぞう)の榊原さんの協力があったからだと思って、恩返しのつもりで「じゃー今度、榊原さんがやっている銀座商店街の行灯廊火を手伝うよ」と言ったのがはじまり。そしたらさ、なし崩し的に、すべてのイベントも手伝うことになっちゃたんだよ。
榊原:そのころは旧まちぞうの「井筒屋」が行っていたイベントを、ファルマン通りの商店も協力してやることになったので、最終的には、所沢中心市街地にある「所沢日栄会協同組合」「所沢プロぺ通り商店街振興組合」「所沢ファルマン通り商店街」「所沢銀座協同組合」の4つの商店組合が連携して、まちイベントを開催し、活性化を行う「とことこまちづくり実行委員会」ができたということなんです。
(2)四季折々のメインイベント
①野老澤雛物語/新三八市「時代着物市」~歴史的文化とトレンドの融合~
所沢は「人形のまち」として古くから知られています。毎年節分が終った翌週から1カ月間にわたって開催される「野老澤雛物語」は、「まちぞう」では江戸時代~平成時代までのお雛様が展示され、所沢の老舗店では代々伝わる「お雛様」を店頭に飾るなど、この時期、所沢市街地が〝ひな祭り一色〟になります。「とことこまちづくり実行委員会」では、市内の幼稚園・保育園児が描いた「お雛様の絵」を集めて、商店の協力店舗前に展示して、にぎわいを創設しています。そして、「野老澤雛物語」の最終日に昔の所沢で行われていた「三八市」を復興させた「新三八市」と名付けた祭りで締めくくります。時期を坂稲荷神社の初午と合わせた見ごたえのあるイベントが催されます。
成田:「野老澤雛物語」の時は、市街地の店舗にたくさんの園児たちが描いたかわいい絵が飾られますね。
田畑:はじめたころは、確か300枚程度だったかな。そのくらいしか集められなかったの。でも今はもう1000枚を目標にして集めているんですよ。
成田:多くの枚数を集めるのは大変ですよね?
榊原:所沢市の協力も得て、園の方にお声をかけてご協力いただています。保育園の方がお集まりの時に、私たちがうかがって、説明させていただいているんです。
成田:町のほうのにぎわいに繋がりますか?
榊原:子どもたちの絵が展示してあると、その子のお父さん、お母さんに加えて、おじいちゃん、おばあちゃんも楽しみにして見に来て下さるので、1枚の絵に対して多くの人数が動くことになるですよ。自分のお子さんやお孫さんの絵を探すことが、まち歩きをするきっかけにもなっています。例えば、日曜日には野村證券さんの前などは、人だかりができる光景も見られますよ。
成田:目の付け所がいいですね。
榊原:田畑さんがアイディアを出してやることになったんですが、最初は、実際どのくらいの商店さんが協力してくれるか不安だったんです。でも、「うちも飾れます」など申し出てくださる商店さんが予想以上にあり、また、近年は商店さんのほうから「うちも飾りたいです」という問い合わせのお電話も頂くようになりました。
成田:商店、市民の親御さんたちが一体になってのイベントですね。ところで、新三八市が加わったのは最近ですね?昔、この町で催行されていた「三八市」の復興版とお聞きしましたが。
榊原:新三八市が加わったのは3年前からですね。御幸町に「坂稲荷神社」がありますが、3月第2日曜日が「初午の日」で、「重松流祭囃子保存会」の「日東支部」と「御幸町支部」が祭囃子を行っているので、その日を雛物語のフィナーレにすることになりました。新三八市では「時代着物市」をしたり「狐の嫁入り道中」という狐の花嫁と花婿が、祭り囃子の音色と共に「銀座通り商店街」を練り歩きながら、「坂稲荷神社」で挙式したりするイベントを行います。
成田:「狐の嫁入り道中」は風情があって見ごたえあり、カメラを持った市外からのお客さんも多くいらっしゃいますよね。
榊原:3月3日が終わると、「野老澤雛物語」のにぎわいも少ししぼむので、まちぞうの展示も少し変更して「新三八市」に向けて着物を展示するなどしていますし、イベントが盛り上がるよういろいろ工夫しているんですよ。
田畑:「とことこ実行委員会」は、お客さんから飽きられないように、何か毎年新しく進化させるという努力をしているっていうところが、えらいよね。新三八市の「時代着物市」も有名になっちゃって。
榊原:着物はお好きな方が多くて、他市他県からもお越しになるんです。外国の方もお見えになっています。
田畑:骨董品も好きな人が多いので、今度は骨董品関係も加えようなんていう希望もでているんですよ。
榊原:お若い方たちもアンティークものが好きなので、そういうものもあるといいかもしれませんね。
成田:そういえば、今や有名になった「ところざわ醤油やきそば」の初お披露目が、3年前の「新三八市」でしたよね。
田畑:そうなんだよ。飲食ブースもにぎわいますね。これも、「とことこまちづくり実行委員会」のほうでは規定を設けさせていただいているんだよね。よそのお祭りだと、ケータリングカーを導入しているところもあるけれど、うちは一切ダメ。地元商店さん主体で行っているイベントなので、出店できるのは、所沢の商店組合の会員さん、商工会議所の会員さん、所沢市観光協会の会員さんであることが条件です。
榊原:これは初めから一貫して崩していないところなんですよ。
田畑:はじめはさぁ、全然有名じゃなかったから、出店したいというところがなかったんだよね。
榊原:もう、あちこちのお店に行って「出てくれませんか」とお願いして回りました。そうして、知名度があがってくると、電話で「フードカーですぐに行けます」という電話をいただくようになったんですけれど、はじめのコンセプトは崩せないので、お断りしている状態です。
②とことこタワーまつり~企画の苦悩と成功~
成田:今年でタワーまつりは、25回目になるそうですね。
田畑:もう四半世紀だよね。これは「コンセールタワー」ができた時にはじめたまつり。はじめは「コンタまつり」という名前だったんだけどね、スカイライズタワーができ、グラシスタワーができたので、3つのタワーでやろうということで、22年前に名前が「タワーまつり」となったんです。
その頃は、人が集まらなかったよね。その後、私が理事長に就任して、1つの商店街でやっても人が来ないので、広いエリアでやろうとテコ入れをしたんですよ。はじめは、駅からスタートして、ダイエー(現在のイオン)と3つのタワーまで歩くように。
それでもね、思うように人が集まらなかったんだよね。その後、所沢に路上アーティストが増えてきたので、その人たちをスカウトして、ダイエーの前でステージをやったら、次第に人が集まるイベントになってきて…。その頃から、今の「まちぞう」の前身の「井筒屋」ができて、銀座中央広場で、フリーマーケットをやり、その後、「西武所沢店」さんも協力してくれるようになったんだけれど、それでも、今のようには集まらなかった。
そして、東日本大震災が起こり、さっきも話したけど、タワーまつりの開催が危ぶまれた時に榊原さんの協力を得て、銀座通りを含めた4つの商店会が一緒にやるまつりになり…。それからだよね。今のように活気が出はじめたのは。
榊原:はい。それが「とことこまちづくり実行員会」の原点ですね。ポツポツとイベントがあったのを、実行委員会を立ち上げて、年間イベントとしてまとめた形になりました。
成田:かつての歴史の名残で、商店会の色が違うということで、それまでは一緒に何かをすることはなかったと伺ったことがあります。「タワーまつり」がきっかけで、4つの商店会が合体したんですね。
榊原:そうですね、何か新しいことを始めるのは大変で。田畑さんが4つの商店組合を結んで、町の活性化につなげたんですけれど、いろいろイベントをしようにも資金難の事情もでてきまして。でもそんな時、まちの開発計画もあり、市の補助金が下りてイベントもうまくできるようになったんですよ。今は、各商店組合さんが協力してイベントを盛り上げるようになりましたね。実際に人の流れが目に見える形になっていくとみなさん認めてくれるようになったような気がします。
~以下【後編】に続く~
取材:2018年9月5日 成田知栄子